Dec 26, 2020
宮沢賢治 グスコーブドリの伝記 五 イーハトーヴ火山局
五 イーハトーヴ火山局
ブドリが、クーボー大博士からもらった名刺のあて名をたずねて、やっと着いたところは大きな茶いろの建物で、うしろには房ふさのような形をした高い柱が夜のそらにくっきり白く立っておりました。ブドリは玄関に上がって呼び鈴を押しますと、すぐ人が出て来て、ブドリの出した名刺を受け取り、一目見ると、すぐブドリを突き当たりの大きな室へ案内しました。
そこにはいままでに見たこともないような大きなテーブルがあって、そのまん中に一人の少し髪の白くなった人のよさそうな立派な人が、きちんとすわって耳に受話器をあてながら何か書いていました。そしてブドリのはいって来たのを見ると、すぐ横の椅子いすを指さしながら、また続けて何か書きつけています。
その室の右手の壁いっ…